胸に焼けついた、苦しい唄のようだった
二人ぼっち 「匂うねえ」 ぽつりと彼がつぶやいた。 その一言の意味が、私には分からなくて首をかしげる。 乾燥した空気と冷たい夜の高い空。 広がる暗闇に二人ぼっち。私たちは、歩いていた。 あまりの寒さに、草履が軋むように音を立てている。 「何が?」 「んーん。何でもない」 そう言って、はぐらかす。 彼の笑みは行燈によく栄えてうつった。 しゅん、と私が鼻を鳴らすと相手が吐息を零した。煙になって消える、消える、消える。 かじかんだ手をぎゅうと握り返すと新八がこっちを見た。 「なあに、。」 「ううん、何でもない」 寄り添うように、二人は歩く。 こんな夜も嫌いじゃない。 |