あなたが眠っていた。

そっと笑むように近づけば、長い睫毛が揺れた。 様子を眺めるのが面白くてついつい魅入ってしまう。 散乱した本の、こっち側はきっと昨夜通して明け方まで読んだやつ。 こっち側はまだ読んでなくて、これから読もうとしているやつ。 そうして今、彼の膝の上にあるのが今読んでいるやつ。

ぱらぱら、と指でなぞるように開くと、 文字の羅列が小粒の光を放つ。ああ、夏の日差しが この部屋にも入ってきているんだと目を細めた。 新八の部屋は少し離れたところにあるから、いつも、ちゃんとおひさまが 入ってるかなって心配だったんだ。 でも、よかった、きっとこれなら風通しも良くて気分がいい。大丈夫だね。

私は買ってきたばかりの菓子の包みをそっと開いた。
薄紅、桃色、橙色、鶯色の粒が転がる。

ころころ、ころころ、

あなたは眠っている。 私は傍でただ、あなたを見つめている

「新八、好きだよ」
「知ってるヨ」
「起きてたの?」
「俺がの気配に気づかないとでも、」
「だって…」

恥ずかしげに目を伏せると、あなたは壊れものに扱うかのように 優しく私の頬を包み込む。睫毛がぴくん、と動いた。

生温かな口付けは、まるで幸せの象徴かのよう。
嗚呼、いま、この瞬間が慈しい。


おべっかに飾られて ( 私、あなたが好きで好きで、いっぱいなの )
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