ユア ハンド

I don't want to lose you.










?」

俺の前を恋人が歩いていた。
蝶結びにした黄色帯に紺色の着物。彼女、特有の後ろ姿。


?」


聞こえていないかと思い、もう一度声をかける。
しかし、彼女は振り返らない。


!」


走った。
どうしてだ、距離が縮まらない。

むしろ

だんだんとの背中が遠ざかる



っ…!」



喉が枯れるぐらいに大きな声で叫んでみた。














「……ぱち?」

「…え。」

「しんぱち。」

…?」

「寝てたの、新八。」



気付いてみると、そこは自分の部屋で。

そして俺の顔を覗き込んでくる



「悪い夢でも見た?」


彼女が優しく微笑うので、ほっとした。

どうやらさっきのは夢だったみたいだ



「ウン、ちょっとネ。…ヤな夢。」

ぼそりと呟いているとは黙って立ち上がる。
様子を見つつ俺は上を見上げた。

の表情が此処からだとよく見えない



「…………新八、私…私ね。」

「ン?」

「…。」



問うてみても答えなど返ってこない。
不安になって俺も立ち上がってみた。

やはり、彼女の表情が見えない。






あれ 可笑しい。

変だ。 何だこの、違和感






?」

「………さよなら、新八。」

「え…」

「さようなら、新八。」

「ちょ、…!?どういう―…」



突然何を言い出すかと思えば、それ以上は何もいわず彼女は俺の部屋から出て行く。
慌てて追いかけるように俺も部屋を飛び出ると、そこには真っ直ぐに続く




い路。




「此処は―…」



呆然としていると、どんどんとは歩いて行く。
先には広がる闇の世界。
とにかく危険な気がして、それ以上行くともう二度と戻ってこれない気がした。


俺も、彼女も。


だから、走っての背中を追いかける。
まるでさっきの夢の続きをみているようだ。



ッ!!!」


ぱしっと掴んだ腕。

彼女の動作が、止まった。




「どうしたノ、いきなり…こんな…!」

「…して。」

「え?」

「離して。」

!」


ゆっくりと、その手を握って見つめた後。
は俺の顔を見て言ったんだ







汚い手で、さわらないで。







次の瞬間にズルリと何かで滑って、繋いでいたとの手が離れた。







唖然として自分の手を見たら、その両手とも  で染まっていた






君の言葉は世界一残酷

こんな手、もう要らない?




















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