ぱちん、ぱちん、ざあ、ざあ

雨の音に混濁しての爪を切る音が響く。 ベッドの上で何一つ纏わず、足の指から順番に手の指を最後にしてひとつひとつ丁寧に 切っていく姿は異様なまでの美しさを表していた。

はお利口さんだネ」

俺が口元を吊り上げて笑うと、「だって神威、爪切ってないと乱暴になるんだもん」と言った。 仕方の無いことだ。 飼い慣らしている猫を可愛がってる時に爪を立てられたら殺したくなる。 誰だってそういうものだろう?

「殺したい衝動、抑えてるだけ有り難いと思ってよ」
「まあね、それは確かにそうだけど」

ちょっとは優しくしてほしいな、と苦々しげに呟いた彼女の言葉を無視して 跨った。次はベッドの軋む音が雨と混ざる。と、同時に爪切りが放られた。

「まだ、左が残ってるのに」
「いいよもう。」

不器用な彼女が左爪を切り終わるまで待っていろ、なんて これじゃあどっちが飼い主か分からない。すると、「神威。」と咎められるように 名前を呼ばれた。

「乱暴にしない?」

返事はせず、のまっさらな裸体にありったけ噛みついてやろうと思う。 だって、そうした方が彼女はよく濡れるしよく締まる。 どうせ待っていたって左爪は歪な形になるだろう。 それならば、いっそ、俺が、


爪を研ぐならにゃあと啼け
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