肌はどちらかと言えば、白かった。女は大抵、そうだ。掴むと細くて、折れそうで 触れるとぼろぼろと鱗みてェに崩れ落ちるんじゃないかと、思った。だから、あま り女には触れなかった。否、そうして俺は一線を引いていたに違いない。理由は 簡単だ。面倒くせェ。何が面倒臭いとか、そういうのは具体的には言えねェが山 崎の相手をしてる時以上に面倒だと感じる。もしくは総悟がバズーカ持って追い かけて来た時のような。何もかもが、面倒くさい。女とはそういう生き物なんだ。 誰に教えられた事でもない。俺の今までの経験上、そう思っただけで…

「愛だの、恋だの、そんなもんは幻想だ。」

そう、誰が言ったわけでもない。俺が今までに色んな女を相手してきての経験上 だったから。どの女もそれなりに面倒で、身勝手だった。都合の良い女が居たら それはそれで面白くねェとは思うが、(そういう土方さんの方が身勝手って言うん ですぜ?)と誰かが、あ、総悟か。言ってたな、そういや。

「でもさー、トシ。」

長年連れ添った女に返事するのでさえ、俺は面倒だと思った。

「ちょ、聞いてる?」

あ、いけねェ。煙草切らした。うわーやべ、今すぐ買いに行くか。アレがねェとすぐ この女の言ってることが全部脳内の中で白い煙となって(そうまるで煙草みてぇに) イライラよりも何よりも、コイツが愛しいと思ってしまうから。それだけは、それだけ は何とかしても避けねェと。

「無視ですか、十四郎さん」
「なにふんだ」

オイ、触んな!この女勝手に近寄ってきて(だから女は身勝手なんだ)俺の頬を 思い切り引っ張るもんだから、いってーんだよコノヤロー。手加減無しか、オイィ

「トシ、あんた…」
「……何だよ。」
「あたしに惚れてんでしょ?」

動揺して煙草の代わりに吸っていたマヨネーズを危うく の顔に噴き出してしま いそうになった。何勘違いしてんだァ、この女!誰か救急車呼んでくれ、マジで、 コイツをどうにかしてくれ。こんなん前代未聞だぜ。誰が惚れてるだと?俺にはテメ ーなんざお呼びじゃねェんだよ、昔から目をかけてやれば調子に乗りやがって。 これだから年下は嫌なんだよ、クソ。マヨネーズもあるのに、煙草が無い。でも次第 にイライラが止まらなくなってきた。つーか、何だコイツ。何で俺の部屋に居るんだよ 間違ってんだろうが。夜中人の部屋に来て勝手に話始めやがって無防備にも程が あるんだよ。もしこれが、俺じゃなかったらどうすんだ。…俺じゃ、無かったら?もし、 総悟の部屋か山崎の部屋にこいつが行ってたら…(あ、それはそれで嫌かも。)

「オイ、」
「何?」

煙草が欲しい。でも、買いに行くのが面倒臭くなってきたらそろそろ俺も重症か、 音も無く、ただ彼女の傍に寄ってみた。そしたら気づくことが多いもんだ。 俺はどうやらが好きらしい。いや、つか、もう愛してるみてェ。 愛してるなんざァ、口に出すのもおぞましいけどな。すると はニヤついた顔でこちらを見てきた。

「トシ。煙草、あるよ。」
「要らね。」



And then he loved her very well.

(こいつ鬱陶しい。畜生、でも、お前の隣が一番落ち着くんだ)




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