Silver Ring

銀箔色の空へと手をかざした
この手はあなたへと繋がっているんだろうか









「銀時。」

「………。」


返事は、無い。
それはそうだと思う。多分、今彼に私の声は聞こえていない。
掠れた声で喋ったせいもあるし、何より今は2人でこの曇りの中バイクでデートというやつをしてるんだから。
少し寒くて、身を縮めぎゅっと彼の腰を強く抱いた。
銀時は気にした様子も無く平然と前を見据えたまま。
こういう時、私は少しだけ置いていかれたような気分になる。
(バカだ。)


こういう時こそ、大きな声で呼べばいい


「銀時!」

「何だー。銀さん寒くてちょっと死にかけなんですけどォ」


ほら、返事が返ってきた。
安堵する想いを閉じ込めて


「だから言ったじゃないの!こんな日に出かける事は無い、って!」


口の中に風が入って上手く喋れない。
銀時はただ笑って「お前何言ってんのか全然わかんねー」と言った。
軽く後ろから小突いて、また強く銀時を抱き締める。


が海見てェって言うから。」

「え?何ー?!」


上手く聞こえなくて聞き返したけど何にも返事してくれなかった。
道は上り坂から緩やかな下り坂にかわって行く。
景色がもやのかかったように見えるのはきっとあの雲のせい。
それでもカーブを曲がって海が見えた瞬間に、その概念は消え去った。




「わぁ!」

「ほれ、見ろよ。海だ」




さっきまでの寂しさなんてどこかへ吹っ飛んだ。
銀時とくっついてバイクを飛ばしながら見る海は最高に奇麗だった。




「見て、銀時。雲の隙間から光が…」

「あぁ。」



一言短く返した、彼の背中をチラリと見た。
いつもの冗談が無いのが凄く不思議で、もっと変なこと言うのかなと期待していたのに。
そしてバイクは海岸沿いの停めれそうな広い場所へと入って行く。




「よし、おりようぜ。」

「うん。」



すぐさま後部座席からおりて、メット片手に走った。



「あ、オイ!コケんじゃねーぞ。」

「そこまでドジじゃないってば」



笑いながら海辺へと降りて、波打ち際まで行く。
あ、貝殻だ、砂だ、海だ、奇麗だ。



少し振り返ると、銀時はのろのろとした足取りでこちらへとやって来た。




「こんな空でも海が奇麗に見えるなんて、知らなかった。」

「あぁ、そうだな。」

「あ、見て!今魚が跳ねたよ!」

「あぁ。」

「……。」

「……。」



変な銀時だと思った。
横に並んだ彼の横顔を見て「銀時?」と名前を呼んだ。




。」




と名前を呼び返された。
いつものようなやる気の無い声でもなく、ただ静かにこちらを向いて
(いつものような死んだ魚の目すらしてなくて)


「どうかした?」

、左手あげてみ?」

「手?…うん。」






銀箔色の空へと手をかざした





「そうそう。んで、そのままね」

銀時はすっぽりと後ろから私を包みこむようにその手に触れた。


「え?銀―…」


後ろを振り返ろうとしたが、次の瞬間に指にはめられた何か。
視線を指へと戻して驚いた。





銀箔色の空によく似合う銀色のリング。





「ぎ…んとき…?」

「いやさ、ほら、アレだ。セールで安くなってたわけ。そんでが喜ぶかなぁって」


急に早口になって喋りだした銀時の声をよそに、私は左手指の四番目、それをただただ見つめた。
瞬きする瞬間でさえ、惜しくて。
ずっとずっと見ていた。




「おーい、さーん?で、まぁ…そのアレだ!丁度金もあったしよ、買ってみたら…」





ねぇ、銀時。
あの時黙ってたのは、少し緊張してくれてたの?
ねぇ、銀時。
家賃も払えないくせに、こんな高価なもの買ってくれたの?
ねぇ、銀時。
意味を知ってるの?





「…んで、ちょうどお前の指にはめてみたらピッタリだったわけ!銀さんすげー」

「ねぇ、銀時。」

「あ?…っておま、何泣い…」

「ありがとう。」




瞬きするも間も惜しくて、そしたら目から涙が溢れてきて。




「ほんとに、ありがとっ」

…」

「大切に、する。」

「おー。……まァいつでも嫁に来い。」



銀時は泣く私の肩を抱き寄せて、笑った。










「あのね、小さい頃、私の手は誰に繋がっているんだろうって思ったんだ」














愛してるの意を込めて、私はあなたに笑ってみせた。













「やっぱり銀時に繋がってたんだね。」



























20070227*アトガキ
いつもお世話になっているmisaへ。shooting star 祝4万打!を記念しましてこの駄文を捧げます。
時が経つのは本当に早いですね、misa。いつも支えてくれて有難う。この場をお借りしまして、大好きです(言った)
そしてこれからもどうぞ宜しくお願い致します 慧*

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