近藤さん、土方さん、山崎さん、真撰組のみんな、そして総悟と私が心配しつつ会場で見守る中、 統悟は全国大会のその日、姿を表すことはなかった。





「何で来なかったの?」
「・・・・・。」

ふてくされたように顔をそらして決してこちらを見ようとしない息子の姿に 私はどんどんと怒りをつのらせていた。全国大会をものの見事にボイコットした彼は、 草原で寝転がっているところを発見され無理矢理私に家へと連れて帰らされ、正座させられ 説教をしている今に至る。もちろん総悟は私の隣にいるのだが、 さっきから黙ってばかり。どうして何も言わないの、旦那に対しても沸々とおさまらない 怒りがどうしようもなく私の中で渦巻いてなんだかこれだと統悟にあたっているように思えてしまう。 極力冷静な脳を働かせ、落ち付いて話し合おうと思った。

「言わなきゃ分からないでしょ、統悟。」
「…言いたくない、」
「あのね、みんながあなたが出場するのをどれだけ楽しみにしていたか分かってる?」
「母上には関係ねェや」

思わず、手が出そうになった。それでも私が統悟をぶたなかったのには理由があった。 隣にいた総悟が私の腕を掴んでいたから。(これじゃあまるで私が悪役じゃない!)

「…一生懸命、お守りも作ったのに、…」

怒りがおさまらない。どうしよう、言いたくないのに、

「みんなだって統悟のために垂れ幕だって作ったんだからね…?!」

止まらない。

「もう、統悟なんて知らない!」

気がついたら、私は部屋からも真撰組屯所からも飛びだしていて夜の街をとぼとぼと歩いていた。 自分でも馬鹿だなあって思う。母親失格だとも感じる、大人のくせに感情的になってしまってつい 統悟に八つ当たりしてしまった。もう、疲れちゃったのかな。毎日統悟と総悟のご飯を作って、洗濯物をして、 繰り返す日々が幸せだと思ってたのに、産んだときは分からなかった大変さが今になってやっと分かる気がする。 今まで言えなかったことがもしかしたら塵となって積もって今日全部吐き出ちゃったのかもしれない。 「育児って大変だなあ、」ぽつりと呟いた言葉が消える。誰か、私の話を聞いてくれるひとがいたらよかったのに。

「そこのお姉ちゃん綺麗だねぇ、一回八万でどう?」

だれ、か、
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