総悟の部屋にある目覚まし時計が夜の九時をさす前に統悟が眠りに落ちた。
今日は稽古があったせいだろうか、昼寝をしなかったのでいつもよりも早く、それこそ絵本も
読まないままぐっすりと熟睡してしまった。広げられた両手と上下する肩、ぽんぽんと軽く
統悟に胸を叩くと布団を被せてやる。寝る子は可愛いというけれど、本当にそうだ。
まァ統悟の場合は何をしてても可愛いんだけど…。そんなことを口にしたら親馬鹿だと世間の人に
は罵られそうだなぁ。
「寝やした?」 今日は珍しくずっと部屋に居た総悟はいつもより低い声で呟いた。 ゆらゆらと蝋燭の明かりが彼を照らして一層艶めかしく魅せるせいだろう、さっきから可笑しくなっている 私の動悸に耳を傾けてみる。すると早鐘を打つように鼓動が跳ね上がった。総悟が私の首筋に顔を埋めた からに違いない。 「そ、そうご…?」 「アンタは統悟の母親だが、俺の女だ。」 酷く優しくて不安定な音色をした声が耳奥へと響く、私の三半規管は痺れたように機能を停止した。 愛しすぎて胸の奥が苦しいのだ、総悟が私に触れるだけでどうしようもない想いでいっぱいになる。 それは恐ろしいくらいの幸せを意味してる。 「、いいだろィ」 嫌なんて言えるはずがない。誘うように彼の頬へと口付けると、一気に肩口から下半身にかけて着物を 降ろされた。露和になる肌と肌が溶け合うようにくっついてより一層愛しさが増す。隣で寝ている統悟 が目を醒まさないように声を押し殺すのに躍起になっていると、総悟が見下げてただ笑う。 「そろそろ二人目、作りやすかィ」 「ん、」 「孕めよ、。」 次は女がいい、なんて能天気に私の上で呟く総悟にお前が産んでみろと言いたくなったが 本当は私も二人目が欲しかったので、大人しく頷くことにする。 総悟はそんな私を見て満足気に口付けた。
La styrienne
きっと二人の夜は床の間に飾った一輪挿しのカーネーションだけが知っている
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