「うわ、乳くせェ」
「断り無しに入ってきてその台詞かァァァ!」

此処は真撰組で、総悟の部屋。
来る前までは綺麗に整頓されて広かった彼の部屋が、今ではすっかり育児室。 それはそう、統悟のベッドに上からぶらさがっているミニカー。 (ちなみにこれは近藤さんが買ってきてくれたやつ。真撰組のパトカーだしね) 畳の上に山積みにされた箱は出産祝いでもらったたくさんのおもちゃやら服やら。 それはいいとしても、今は統悟に授乳していたとこで。

「お前…何、人の女の胸吸ってんでィ。」

目線を合わせるように総悟が息子を見た。

「俺のもんで…ぶへっ!痛ってェな、何すんでィ!」
「変なことを息子に教えるなァァァ!」
「当然だろィ?こいつうまそうに吸ってやがんで」
「嫉妬してどうすんのさ!」
「アンタ、俺の女だろィ。」
「その前に一児の母です。」

きっぱりと言い放つと、総悟はチッとこれみよがしに舌打ちをして(何こいつ、 じゃあアンタが乳やりなさいよォォォ!)と言ってやりたくなったが堪えた。私 って大人だなぁとつくづく思うよ。再度統悟を抱きなおすと「あうっ」と声を漏 らした。喋ったかと思って驚いた私と総悟は、勢いよく統悟を見つめる。

「今、コイツ…パパって言いやせんでした?」
「は。何言ってんのママって言ったに決まってんじゃない。」
「いや、絶対パパでさァ。」
「パパなわけないでしょー!ミルクあげてるの私なんだからね?!」
「でもほら、見てみなせェ。統悟が見てんのは俺の目ですぜ。」
「ちょ、マジでか。とーごぉー!おかーさん、見なさーい?」
「てめ、卑怯ですぜ。オイ、統悟。父上でさァ、ほら、ちゃんと目ェ逸らさずこっ」
「総悟こっち寄らないで!」
。良い度胸してんじゃねーかコノヤロー」
「痛い、ちょ、ほっぺくっつけないでってば!」
「だったらアンタがどきなせェ。そのでかい顔が邪魔。」
「今なんつったァァァア!」

総悟と二人で子供の目線の奪い合い。統悟はというとどっちを見ていいか分からずに 定まらない目線のまま母と父を交差に見た。「きゃ、は!」頬をくっつけて押し合い している二人に笑い声のオプション付きで。何で笑うのさ、と思いつつ統悟を見てい た。無邪気に笑う表情まで総悟にそっくりだ。ただ、総悟と頬を寄せて我が子を見て るのがなんだか私は嬉しくなってしまって統悟と一緒に「きゃはは」と笑った。隣で 頬をぴとりとくっつけて離そうとしない総悟は、なんだこいつら。と言いたげな目を して私たちを見たが、「アンタにそっくりでさァ、コイツ」と今度は彼が笑った。何 がそっくりなんだろ。ずっと貴方の方が似てるよ、なんて言い返したかったけれど総 悟と触れあっている頬が少しだけ温かくて思わず顔をずらして、ちゅーと口付けた。

「何、してんでィ」

呆気を取られた総悟を余所目に今度は統悟の頬にちゅうをした。

「幸せだなぁと思って。」

思った以上に頬が緩むのだ。こんなに心があったかいのは、総悟が傍に居てくれるか
らで、統悟が腕の中で笑ってくれるからだと思った。だからその夜に、まさかあんな
緊急事態が発生するとは総悟も私も全く予期しておらず

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